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2008.08/19(Tue)

自覚 前編

これはARIAの二次創作小説です。ジャンルは暁灯里です。
ご勘弁な方はバック願います。

今回も長くなってしまいました。最長です。毎度のように前後編に分けてしまいました。
では、お楽しみ頂ければ幸いです。


ナガサキの日、空は蒼く


ARIAカンパニーが、ひとりと一匹になって少し経って。

かつての白き妖精の頼みから、何度も何度もそこへ通う日々の途中。


===================================



   自覚 前編



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朝の寒さが身に沁み始めたある秋の日の早朝。
暁は早番のため、いつもよりすこし早く家を出た。

ちょうど隣からエアバイクで出勤しようとするウッディと鉢合わせ。

「おう、ウッディじゃねえか。おっす。今日も早えな」
「おはようなのだ。あかつきん、今日は早番なのかい?」
「おうよ。今日はちっと忙しくなりそうなんでな。ちょっと早めに出勤よ」

はて、と考えるウッディ。すぐに合点がいったのか、手を ぽん と叩き、

「あ、もしかして今日は在庫を調べる日かい?」

と返す。それは正解だったらしく、苦虫を噛みつぶしたように渋い顔をする暁。

「…おうよ。苦手なんだよな。細けえ仕事って」

火炎之番人として冬という大繁忙期を迎える前に、必ず実施する在庫調査。
それが今日だった。

「あははは~!頑張るのだ。あかつきん!」

楽しそうに笑う幼なじみ兼親友を恨めしそうに見やり、
ふと空っぽの荷台に大事そうに積まれた小さな物に気付く。

「なんだ?そりゃ」
「卵なのだ!…うちで鶏を飼い始めたのは知ってるよね。あかつきん」
「おう。お前、会うたびに『鶏さん可愛い』だの言ってんだろ。
 いやでも知ってるって」
「ああ、本当に可愛いのだ!」
「…で?会社の奴にでもやるのか?」
「いいや、灯里ちゃんにお届けするのだ!」

瞬間。まっしろになる暁。

 (へ?いまなんつった?なしてもみ子に?)

「やっぱり飼い始めたばかりだから、そんなに毎日は卵を産んでくれないんだけど、
 産んでくれたときには毎回、灯里ちゃんにお裾分けしているのだ。
 昨日もうちの鶏さんが卵を産んでくれたから灯里ちゃんにお裾分けと思って
 ARIAカンパニーに行ってみたら、なんか風邪気味だったのだ。
 だから、今日もうちの鶏さんが産んでくれたこの卵をお届けしようと思ってね。
 これで卵酒でも作ってもらって、早く元気になってもらうのだ!
 おっと、遅刻してしまう。それじゃ、行ってきますなのだ~~~~」

返事を返す間もなく、風のように去っていくウッディ。
暁は、ただ小さくなるエアバイクとその乗り手を見送った。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


かろうじてミスもなく仕事をこなしていた暁だったが、
ふとした時に脳裏にちらつく影に戸惑っていた。
桜色の髪の毛。揺れるもみ上げ。

 (なんだってんだ。ちくしょう)

すこしいらいらする。…でも。
今朝ウッディから聞いた『風邪気味』が気になってしょうがない。

頭をがしがしかき回し、

 (あ゛ーーーっもう!終わったら下行き決定っ!!)

決めたら少し気が楽になったのか、いつもの速度で仕事をこなせるようになった。



だが。

しばらくして、またもや仕事の速度が落ちた。

次に気になりだしたのは、……実はこちらのほうが重傷なのだが。

 (なんで、ウッディーが、昨日も今日ももみ子の所へ寄ってんだ?
  いや、毎日って、言ってなかったか?)

「毎日」ではなく、「毎回」なのだが、
そんな細かいところまで覚えているような余裕は、暁には無かった。

 (それって、どーゆーことだ?

  もしかして、ウッディーの奴、ま、まさか………)

火炎之番人の自分と違い、風追配達人ならいつでも水先案内人に会える。
そして、ウッディーは昔からの幼なじみであり、親友でもある。

 (もし、ウッディーが…その……仮に、もみ子を好きだったとして)

そう考えた瞬間、自分の鼓動が凄まじく跳ね上がり、暴れ出した。
息苦しささえ感じて、思わず胸に手をやり、心臓あたりを握り拳で押さえつける。

 (オレは…どうなんだ?)

思わず出てしまった疑問は、暁の動きを完全に止めてしまう。


「くおらっ!暁っっ!!なにぼーっとしてやがるんだっ!」


いきなり親方の怒声が響く。声をした方を慌てて振り向くと、
倉庫の入り口に親方が立っていた。

 (やべ、仕事中じゃねーかよ!何考えてんだオレ!)

「すいやせんっした~~~~っ!」

すぐに答えて在庫調査に戻る。

「ちげえよ!昼だ昼!さっさと昼飯食ってこい!」
「………へ?」

時計を見ると、とっくに昼の休憩時間に入っていた。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


頭の隅にあるなんとも言えない、今まで感じたこともない、
激しい嵐のような感情をもてあましながら、
何とかその日の終業時間を迎えた。

残業になりそうな所だったが、親方に「さっさと帰れ」とどやされてしまった。
親方も、なにか感づいていたのかも知れない。
いつもなら食い下がってでも残業する暁だったが、
今日は素直に親方に従い、定時で上がった。


一度家に帰り、ダッシュで風呂に入ってダッシュで上がり、
下に行く用意を終えると、卵酒のために適当な酒瓶を持ち、

 (おそらくあいつの所にゃこんなもんねえだろうしな。
  つうか、そもそもあいつ酒飲めんのか?)

とりとめない疑問を頭から振り払いつつ

「ちょっくらヤボ用で下に行ってくる。帰りは遅いから、飯いらねぇわ」

母にそう告げる。
家を出る直前、奥から小走りでやって来た母に呼び止められ、

「あんた酒瓶そのまま持ってくの?恥ずかしいからコレに入れて行きなさい。
 それと、これも持ってって。風邪に効くと思うわよ」

などと言われ、細長い紙袋と漢方薬の束を受け取る。
たしかに酒瓶を剥き身のまま持って歩くのはいただけない。

「ていうか、お袋。オレ、どこ行くかも言ってないんすけど」

なぜか語尾が敬語になる息子を見ながら、
その照れ隠しを見透かしたように母は言う。

「ん?灯里ちゃんのところでしょ?」

瞬間、暁の頬が赤く染まる。

「なっ!何故それをっ!」
「今朝、灯里ちゃんに電話したら、風邪ひいたって言ってたからね。」

以前、歌劇『水の妖精』だかのパンフ探しの時に家に上げて以来、
母は灯里をいたく気に入ったらしく、
その後も暁の知らぬところで連絡を取り合っているようだった。

「あんたも、わざわざ火炎之番人の制服着て。私服で行けばいいのに。
 灯里ちゃんの前で私服って、照れるんでしょ?」
「なっ…!そっそんなことないぞっ!」

そんな息子の必死の弁解も聞かずに、話を進める暁母。
顔を真っ赤に染めている時点で、弁解などしても無駄なのだが。

「あとね、これも持って行って」

どかりと、でかい風呂敷包みも持ってくる。
どんどん増える荷物に辟易する暁。

「…こ…これは……一体?」
「ポトフ。着いたら軽く暖めてあげなさい。
 アリア社長とあんたの分もと思ってちょっと多めに作っておいたから、
 下で一緒に食べてくるといいわ。
 大丈夫。この鍋、密閉式だからちょっとやそっとじゃこぼれないわよ。
 重いけど、あんたなら平気でしょ?」

観念したように、重い風呂敷包みを軽々と持ち上げ、
細長い紙袋に入った酒瓶と、漢方薬を確認して。

「じゃ、行ってくるわ」
「は~い。行ってらっしゃ~い。灯里ちゃん、襲うんじゃないわよ」
「だっ!誰が襲うかっっっ!!!」


家を出てまっすぐロープウェイ駅へ向かう。
自然と早足になる自分に少し戸惑いつつ。

どうしてこんなに急いでいるのか、何故下に行こうと思うのか。
あいかわらず訳の分からない感情に少し苛つきながら。


少し遅れて彼の束ねた黒髪が、流れるようにその軌跡を追う。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


すっかり夕闇に包まれた街。

気が急いていたからなのか、奇跡的に迷わずARIAカンパニーにたどり着いた。
いつも声をかけるオフィスの窓はシャッターが閉められていて、
『本日臨時休業』の札が時折吹く風に揺れる。

 (風邪、ひどくなったんかな)

心配になった暁は、2階への階段を駆け上がり、
居間へと続く玄関を軽くノックしながら

「たのも~~~~っ!」

いつものように声をかける。

少ししてから、ぱたぱたと足音が聞こえて、
がちゃりと扉が開け放たれた。

「あれ~。暁さん、どうしたんですか?」

いつもの桜色の髪。見慣れない私服。すこし鼻声なのが気になる。

「いや、ウッディーから、貴様が風邪をひいたらしいと聞いたのでな
 見舞いに来てやったぞ」
「あ…ありがとうございます!見舞いに来て頂くほどでもないんですけど…」
「やかましい。風邪はひき始めが肝心なのだ。
 お袋からお前にと、いろいろ持たされた物もあるしな。
 とりあえずじゃまするぞ。いいか?」
「はひ!もちろんです。どうぞ~」

もう少し優しく言えばいいものを、何故か偉そうに言ってしまう。
相変わらずな暁だった。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


中に入ってすぐ、真っ赤な顔で寝込んでるアリア社長が目に入った。

「もみ子…。こっちの方が重傷じゃねえか」
「はひ…。そうなんですよ」
「ま、持たされた漢方薬もたくさんあるしな。
 とりあえず飯食って、これ飲めば一発で直るから。
 オレ様もガキのころからこいつにゃずいぶん世話になったからな」

出雲家の常備品である漢方薬を手渡しながら言う暁。

「ありがとうございます。じゃあ、晩ご飯の支度しなきゃ」
「それも心配無用だ。こいつも持たされた」

と、ごとりと重そうな音を立ててテーブルに置かれる風呂敷包み。

「お袋特製のポトフだ。三人分あるからな」

灯里は、次から次へと出てくる見舞いの品に驚きつつ、
暁が手に持ったままの紙袋に気が付いて。

「? その細長い紙袋は…?」
「これか?これは酒だな」
「いやいや!私まだ未成年ですし!風邪なのにそんなもの飲んじゃ…!」
「早とちりするな。これは卵酒用だ。ウッディーからもらった卵あんだろ?
 あれで卵酒作って飲めばさらに完璧だ。風邪も裸足で逃げ出すだろ。
 それに卵酒は酒のうちに入らん」
「すごいです!暁さん、何から何までありがとうございます!」

 (めちゃくちゃなことを言ってるけど、
  暁さんが言うとその通りに聞こえてくるから不思議)

そう思ったが、言うといつもの突っ込みが来ると思い、そこは黙っておいた。


「それじゃ、これ、暖めちゃいますから、ちょっと待ってて下さいね」

と、鍋を持って台所へ向かおうとする灯里。
すると、暁が横からやって来て、
重そうに鍋を抱える灯里からそれを奪い取りコンロに置くと、
ぷいぷいと唸っているアリア社長の様子を見に行った。

「おいおい、社長、大丈夫か?」
「ぷ…ぷぷいにゅぅ…」

普段病気とは縁遠いであろうアリア社長。この風邪は本当に答えているようで。
熱を持って辛そうな社長の額に手を置いた。
先ほどまで外を歩いていた暁の手は、まだひんやりと冷たい。
アリア社長は、とても気持ちよさそうに、その冷たさを感じているようだった。
逆に暁も、冷えた手が温まっていく感覚に、気持ち良さを感じていた。

「もうちょっとしたら飯だからよ。つらくても少し食っとけ。
 そんで薬飲んで寝りゃあ、だいぶ楽になるからな」
「ぷ………」

男同士の会話が進む中、灯里は台所でポトフを温めていた。
時折、暁とアリア社長を見て

 (本当に仲良しさんですねぇ)

と、微笑みながら。


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「自覚 後編」に続きます。

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