07月≪ 2017年08月 ≫09月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031
--.--/--(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告  |  EDIT  |  Top↑
2008.08/25(Mon)

初めての

これはARIAの二次創作小説です。ジャンルは暁灯里です。
ご勘弁な方はバック願います。


ナガサキの日に


ARIAカンパニーの従業員は、現在ふたりと一匹。


その一人の引退が決まって、日々、予約の消化に忙しくなっていた頃。


===================================



   初めての



===================================


「え? 今回は予約入れて頂けるんですか?」


思わず聞き返してしまった。
電話の向こうから、とたんに不機嫌そうな声が帰ってくる。

「あぁ? ”今回は”ってなんだよ”今回は”って。予約取り消すぞ」
「はわわ!すみませんっ!ありがとうございます~。
 一人前になって初めての予約ですから、素敵な所、たくさんご案内しますね~」

はたと気付いて、おずおずと

「あの~~。暁さん、アリシアさんの舟に予約入れなくていいんですか?
 今なら何とかねじ込めるかもしれませんけど…」

その一言に、弾んだ彼の声が返ってくる。

「!!!ままままじか!………。いや……。いいや。
 アリシアさんもお疲れのことと思うしな。
 すげぇ重なっていらっしゃるんだろう?予約」

その質問に答えるために、灯里は壁のアリシアの予定表へと視線を移す。

「はい…。まあ…。今は一日5~6件。
 それぞれに2組ずつ乗って頂いているんですが、それでも追いつかなくて。
 6件目はいつもナイトクルーズになっちゃってます。
 朝8時には出て、帰りは夜9時を過ぎてますね」

盛大なため息が、電話の向こうから聞こえて。
画像に映った表情も、曇りがちになる。

「やはりオレなどのために、アリシアさんのお手を煩わせる訳にはいかん。
 ……でも乗りたい…」

最後にぽつりと願望が出てしまう暁。

「やっぱり予約入れておきましょうか?」
「いや!いい!もみ子の舟で我慢してやろう」
「はあ。我慢ですか……。なんか複雑ですね」

思わず本音が出てしまう灯里。そこへ間髪入れず暁の突っ込みが入る。

「なんだ?なんか文句あんのか?」
「いえ!ありません!」
「分かれば良し!じゃ、よろしく頼むぜ」

そして電話は切れた。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


数日後。


「おはようございま~す!暁さん!」
「お~~~っす!」

運河には白いゴンドラ。その上には桜色の髪の水先案内人と、
りっぱなもちもちぽんぽんをお持ちの火星猫。

「予約もひっくるめて、私が一人前になって初のご利用ありがとうございます!」
「へ?そうなのか? もうとっくに誰か乗ったと思ってたんだがな」
「いえいえ、”アリシアさん引退”が大きすぎて、皆さんそちらに…」
「あ…そう…」
「さあ、お手をどうぞ!」

そう言って、白い手を差し出す。当たり前だが、その手にはもう手袋はなかった。
いつもなら”手などいらん!”などと言って、さっさと乗り込んでしまうのだが、
今日は思わずその手を取っていた。
その柔らかさと、もみ子とはいえ女子の手を取ったという事実に暁の頬は紅潮した。
乗ってすぐに手を離す。まったく心臓に悪い。

「ふふっ」
「な…。なにが可笑しい!」

座りながら、いきなり笑った灯里に非難じみた視線をくれる。
背中にはすでにアリア社長がへばりついていて、
頭に向かってよじよじ登山を開始していた。

「いえ、私の”初めて”にはいつも暁さんがいるなぁって思って」
「へ?」
「ええと、片手袋になって初めてのお客様も暁さんでしたし、
 浮き島に初めて行ったときも暁さんが案内してくれましたよね。
 初めての年越しでもご一緒しましたし、
 ボッコロの日に初めて薔薇の花を頂いたのも暁さんでした。
 他にも、初めてレデントーレにご招待した時も来て下さいましたし、
 ほら、秘密基地だって、最初に暁さんにばれちゃいましたよね!
 海との結婚の時だって、実は男の方から指輪貰ったの初めてで。
 ええと、あとは…」

次々と列挙していく灯里の記憶力に、素直に感心しながら、
暁は言われたそれぞれを思い出していた。

「ああ、そうだっけか。てか、よく覚えてるな」
「はひ!観光案内のためっていうのもありますけど、
 暗記や記憶力には自信がありますから!」
「んじゃ…」

と言いかけて、口を閉ざす暁。

「? どうしました?」
「いいいいいいや!なんでもないったらなんでもないぞっっっ!」

何故か真っ赤になっていた。

「えーい!とっとと出発しろ!」
「はひ~~~」



まさか言えるわけがない。

『んじゃオレ様は、常にもみ子の初めての男なわけだ』 などと。

危なく言いかけたが、すんでの所で思いとどまった。

 (その表現はまずい。非常にまずい。
  もういろんな意味で誤解を招きまくるじゃねえか!)

脳みそとか顔とかが沸騰寸前な暁だったが、
滑るように進み始めたゴンドラに向かって吹く、さわやかな風のお陰で、
真っ赤な顔も冷えていった。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


今日のルートは灯里におまかせで、暁がリクエストしたのはただひとつ。
最後に浮き島の空中ロープウェイ駅へ。


「まずは橋めぐりしましょうか~」

と言われ、ため息橋やらアカデミア橋やらリアルト橋やらの下をくぐり、

「じつは穴場があるんですよ~」

などと言いつつ、藤の花の名所に連れて行かれ、

「ちょっと遠いですけど、ここまで来たなら行っちゃいましょうか!」

と、さらに上へ上へと。途中、水攻めに遭いつつ、通称希望の丘へ。


2時間の予定のはずが、もう3時間近く経っていた。
といっても時が経つのも忘れてはいたが。

「おいもみ子よ。アリシアさんの手伝いで同乗するとか言ってなかったか?」

休憩と称してジェラートを二人と一匹で食べながら、思わず聞く暁。

「それがですね、今日はひとりで大丈夫だからって言ってくれまして。
 初めてのお客様だし、ゆっくり案内して差し上げてね、
 ってお言葉に甘えちゃいました」

そう言って、いつものように笑う。見る者を和ませる笑顔で。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


最後に、地上から浮き島を見る絶景ポイントに案内して。

「それじゃ、本日最後のルートに入りますね」

と浮き島の空中ロープウェイ駅へ続く水路に入る。
同時に気付く暁。

「おい、ここって、最初に乗ったときの水路じゃねえか?」
「はひ!当たりです!」
「てことはよ」
「あ!やりますか!久しぶりに!」

言うと同時に、鮮やかにターンするゴンドラ。
灯里が、逆漕ぎの体勢に入る。

「暁さん!アリア社長!前方確認おまかせします!」
「おう!まかせとけ!」
「ぷぷぷいにゅ~~っ!」
「じゃ、行きますよ~~っ!」

滑るように進み出し、どんどん速度が上がる。
前に乗ったときよりも、遥かに早い。


すれ違う舟もない。まるでこの舟の専用水路のよう。


しばらくして、他の運河との合流点が見えてきた。

「もみ子!合流点まであと少し!」
「はひ!ブレーキかけます!掴まってて下さいね!」

素早くアリア社長を自分の背中に回し、両手を舟の縁にかけ力を入れる暁。
それを確認したあと、灯里は急制動をかける。
暁の黒髪が彼の前に流れ来る。対して灯里のサイドの髪は彼女の後ろに流れ。
あっという間に止まる舟。


「ぷっ…あはははは!」
「ぷっ…ぷぷいにゅう~!」


完全に止まった舟の上で、同時に笑うふたりと一匹。

「ちょ…休憩…させて、下さひ…」

笑い疲れたのか、漕ぎ疲れたのか。
灯里は息を切らしながら舟を端によせて、座ってお茶のポットを出した。
それを暁とアリア社長に振る舞って、自分も口をつける。

「あ~楽しかった!」

その横で何か考えている風な暁だったが、唐突に顔を上げて。

「…。よし、決めた。」
「へ?何をですか?」
「毎月給料日後に予約入れてやっから、毎回逆漕ぎリクエスト!」
「えええ~~~!」

その反応に、不機嫌な顔を作って即座に突っ込む。

「なんだ不服か」
「いえ、毎月予約って、大丈夫ですか?いろんな意味で」
「…どういう意味だ?」

そう言って、いつものように彼女のもみあげを引っぱる暁。

「はひ~~。髪引っぱるの禁止です~」


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


小休憩を終えた灯里は、元通りに舟を戻して漕ぎ出し、
しばらくして、滑らかに浮き島のロープウェイ駅の船着き場に止まった。

「お疲れ様でした~!」
「おう。なかなか面白かったな」
「よかった~」

そう言って、いつものように鮮やかに笑う灯里。
一瞬見とれてしまったが、すぐにいつものしかめ面に戻る暁。

「しかし腹が減ったぞ。てかもう昼すぎてんじゃねえかよ」
「あれ~。もうこんなに経ってたんですね。時間が経つのも忘れてました」
「あのなぁ。そんなんじゃ、この先思いやられるぞ。
 毎回時間サービスするつもりか?」
「ああ~~。そうですね。気をつけないと」

それでもふにゃりと笑う灯里を見て。

 (まったくぼけぼけした奴だなあ)

と、思ってしまった。
多分、これから乗るであろう他の客にも、少しだけ時間サービスをするのだろう。

「あー、もみ子よ。舟の運賃はいくらだ?」
「あ、えーとですね…」

言われた額を、懐から出した財布から抜いて灯里の手へ。
少し考え込んだ灯里は、その一部を暁の手へ再び戻す。

「?」
「お友達の割引価格です」
「だーかーらー!そんなんじゃ先が思いやられると何度言わせる!」
「あはははっ!でも、今日は私も楽しんじゃいましたし」
「てか、毎回楽しむに決まってんだろーが!お前の性格じゃ」

そう言いながら、戻された代金を渡そうとする暁と、
それを受け取るまいとする灯里。
結局は、暁が根負けしてそれを懐に戻した。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


暁を降ろすために、片足を舟に、片足を岸において、

「はい、暁さん。お手をどうぞ」
「…おう」

また、手を取ってしまった。そして、再度その柔らかい手に、頬が赤く染まる。
これまた心臓に悪い。ふと、何かを思いついたのか、無意識にその手を握る。

「あ、あかつきさん?」
「おい、もみ子よ。今日はこの後、予定とかあんのか?」
「いいえ?このまま会社に戻って業務日報書いたり、
 事務仕事しようかと思ってますけど」
「そうか。よし、オレ様今から昼飯食うからな、付き合え」
「? はひ?」
「ひとりで食ったってつまんねーだろが。なーっ、アリア社長」
「ぷい~~~」

ふと見ると、もう行く気満々のアリア社長が、暁の頭の上によじ登っている。

「さっきの割引の借りもあるしな。オレ様が奢ってやろう!ありがたく思え!」
「え? いいんですか?」
「だから何度も言わせるなっつーのっ!」



こうして、毎月必ず、彼からの予約が入るようになった彼女。
彼のために毎回ルートを変えて案内するうち、
業界の中で、一番ルートバリエーションが豊富な水先案内人として有名になるのは
もう少し先の話。





End.
===================================
2008.08.24.脱稿

以下、あとがきです。



【More・・・】

===================================
セルフライナーノーツ  初めての
===================================

て、完成時間、仕事中だよ。なにやってんのオレ。

仕事中に、といってもほんの少し手直ししたくらい…ですが、それでも仕事中だっつうの。
しかし今日は何故か激ヒマだし、本の入荷もないし、…で、たまにさぼって打ってました。ホント、駄目人間ですね。

今回は楽しかったです。集中して打ちました。原作のエピソードを入れたり、短文で妄想した設定を組み込んだり。そしたら出来上がりがこんな感じになりました。
SS打つときは毎回、相模が一番楽しんでいるんですけどね。

BGMはB’z「GOLD」
『一人でも怖くない 気がついただろう?』『朝の光よりまぶしい微笑みは 胸に染みる』『何も心配しないでいいから 明日へと無邪気に進め』そして、『新しい日々が始まるよ』
実はこの曲、お互いを想い合うふたりの歌なので、この時の暁灯里には少々早いのですが、プリマになって不安な灯里を無意識に心配している暁(だから予約入れたんですね)ということでひとつ。
大人になったふたりで、この曲でもう一度SS書いてみたいとも思います。超超弩級ベタ甘になると思いますけども。

毎度毎度の妄想小説、お気に召しましたら幸いです。

関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作小説 - ジャンル : アニメ・コミック

00:52  |  ARIA小説  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

コメントを投稿する

URL
コメント
パスワード  編集・削除するのに必要
非公開  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

この記事のトラックバックURL

→http://dameningensagami.blog95.fc2.com/tb.php/37-20a14140
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。