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2011.11/09(Wed)

彼の内面に於ける思いの推移と、想いの増加に関する一考察 後編

 この小説は、1995年6月に角川書店様から出版されました、
「タイム・リープ あしたはきのう」 高畑京一郎 著 (敬称略)の二次創作小説となっております。
 これは個人的な活動であり、著作権をお持ちの原作者様ならびに関係者様には一切関係ございません。

 また、作品のネタバレを含みますので、未読でネタバレ回避の方は、絶対にお読みになりませんよう、重ねてお願い致します。


 また、こちらは「彼の内面に於ける思いの推移と、想いの増加に関する一考察」後編となっております。前編未読の御方がいらっしゃいましたら、「前編」からお読みになることをお奨め致します。

 それら全てが大丈夫な御方、どうぞごゆっくりご覧下さい。
 この作品が、貴方様の余暇を潤せるお役に立てるなら、それはとても幸いです。



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彼の内面に於ける思いの推移と、
想いの増加に関する一考察
後編



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 目を覚ました時、目の前に鹿島がいた。遠くには犯人の中田が倒れており、俺の後ろには関がいて、全てが終わったことが分かった。右脇腹に、耐え難い痛みがあったが、これくらいで済んだのだ。これ以上ない最良の結果で終わったようだ。
 しかし、それでも俺を許さない者がいた。鹿島だ。お陰で、女子に胸ぐらを掴まれるなどという、今後一切しないであろう経験が出来た。しかもこの俺に向かって『馬鹿』と言った。『馬鹿』って。17年間生きてきて、俺に『馬鹿』と言ったのは、関に続いて彼女が二人目だ。
 どうやら鹿島は本気で怒っているらしい。いつもなら、女子が怒ると『面倒臭い』としか思えず避けるのに、彼女に対しては『面倒臭い』とは思わなかった。ただ、持て余した。

 怒りで眉を寄せていた表情が、徐々に変わった。目がじわじわと潤み、そこから涙がこぼれた。と思ったら、次から次と溢れる涙。まさか、泣かれるとは。それほど心配をかけたとは思っていなかった。だから、一切の抵抗をやめた。ただぽかぽかと、叩かれるにまかせた。それで彼女の気が済めばいい。

 いつしか鹿島は、叩くのをやめて、俺の胸で泣き続けた。
 困った。こういう時、どうすればいいのか全然分からん。
 頭でも撫でてやればいいのだろうか。でも俺の右手は痛む右脇腹を押さえてるし、左手は体を支えるのに使っている。だから、結局出来たのは。
「……心配かけて、すまなかった」
 そう言ってやることだけだった。
 彼女は何度も何度も首を振りながら、
「ううん……良かった……生きててくれて……」
 と言ってくれた。報酬はそれだけで充分だ。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

  

 ……で。どうしてこうなってんだ?
 俺は、鹿島と並んで歩きながら、帰路何度目になるか分からない疑問を浮かべた。しかも、脇腹が痛くて、いつものように歩けない。今日は送れないからさっさと帰れと言ったのに、どうも鹿島は俺の家に来る気らしい。関め。要らん入れ知恵しやがって。しかも脇腹にご丁寧に一撃のおまけ付きで。とどめまでさしてくれてありがとうよ。月曜日覚えてろ。

 どうにか家に辿り着き、美幸にも怪我がばれることなく、自分の部屋に上がることができた。正直、鹿島がいなかったらばれていただろうから、そこは素直に感謝する。
 だけど、手当は別だ。その、あの、あれだ。付き合ってもいない女子に、なんで手当してもらわなきゃならんのだ。だというのになんだ。あの握り拳付きの
「診・せ・な・さ・い」
 てのは。
 もうこれ以上脇腹を攻撃されるのはご免なので、溜息と共に降参した。関、本当に覚えてろよ。
 湿布薬を貼ってもらうまでは良かったんだが、包帯は、正直、ちょっと困った。脇腹だぞ。その、巻くとき、あの、抱くような格好になるだろうが。だから彼女でもないのにそこまでしてくれるな。……なんて事、言える訳もなかった。
 しかし鹿島よ。包帯を巻きながら話しかけるな。その場所、すっぽり腕に収まる場所だから。しかも質問がいけない。
「それにしても……どうして逃げなかったの?」
 君がそれを聞くなよ。出来れば言いたくなかったのに。言わないままお役御免で、単なるクラスメート同士に戻れればよかったのに。
 俺は彼女に聞こえぬように、小さく溜息をついた。
「時間を再構成させて、それでもなお君を助けられると思うほど、俺は自分の能力に自信がなかったんでね」
 言わないと勘弁して貰えないと分かっていたので、最低限のことだけ言った。さらに、
「君に逃げるなと言ったのに、自分だけ逃げるわけにはいかないじゃないか」
 と言ったら、黙ってしまった。どうやらさっき、自らが言ったひと言を気にしているらしい。そんな事、気にしてもらうつもりじゃなかったんだが。
 まあ、たしかに、『他人事』と言われた瞬間、むっとしたのは事実だからな。

 会話が途切れると同時に、包帯も巻き終わったらしい。さらにタイミング良く、階下から足音が聞こえてきた。美幸だ。急いでまくり上げていたワイシャツを戻し、散乱した缶とさらしを隠した。
 その後美幸は、果物の山を運んできたり、電話の子機を運んできたり。鹿島などはそれを見て「可愛らしい」とか言っていた。一度眼科に行ったほうがいいと思う。

 電話は関からだった。会話しながら彼女にも中継してやろうと思っていたのだが、あろうことか、俺のすぐ隣に座って、受話口の裏に耳を当ててきた。なんだこの密着度は。けしからん。俺が君の父なら絶対殴るぞ男の方を。待てもうなんかいろいろと。
 ……言いたい事は山ほどあったが、結局なにも言えず、関との会話に戻った。

 結局、後日俺と鹿島は、警察に事情を話すことになった。それでも、学校にも新聞にもばらしはしないとのことだから、一安心だ。
 今回の事では、関にはとても迷惑をかけたが、が、
『その馬鹿の事を、よろしく頼むよ』
 っていう鹿島へのひと言は余計じゃないか? しかもまた馬鹿って言っただろう。まあそんなのはどうでもいいんだが、最後に言ったあれはなんだ。
『突っ張るのもいいが、たまには負けろ。その方が、人間が大きくなるぜ』
 まったく、余計なお世話だよ。
 
 通話の終了した子機を見詰める。思わず苦笑が浮かんだ。ああ、これで本当に全部終わったんだな。後残っているのは説明だけか……。
 ただ、鹿島の頷き方が曖昧だったのだけが、少しだけ引っ掛かった。



◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

  

 鹿島が子機を下に戻しに行くと言うので、頼んだ。さすがにまだ脇腹が痛いし、それに説明の順序を考えなくてはならない。関には起こったそのままを話すからいいとして、警察にはそんな説明出来るわけも、信じて貰えるわけもない。俺はベッドから椅子に座り直し、鞄からスケジュール表を取り出して、にらみ合う。
 そこへ鹿島がコーヒーを運んできてくれた。これは、あとで美幸から説教くらう羽目になるな。そう思いながらも、俺は説明の順序を組み立て始めていた。

 そんな中、鹿島はずいぶん真剣に話しかけてきた。最初は片手間に聞いていた。が。

 …………途中から、なにかすごい話の流れになったような気がするぞ。

「それじゃ、なにか? 俺は、これからもずっと君のそばについてなきゃいけないのか?」
「駄目?」

 ちょっと待て。俺はそれほどいいやつじゃないぞ。自分で言うのもなんだが、冷たいし、面倒事は嫌いだし、趣味はパズルとクロスワードと機械いじりと読書だし。取り柄は『約束は必ず守る』ってところだけだぞ? 多分後悔するぞ?

 て、ずいぶん長い間見詰めてしまった気がする。しかもいつもの様に、目つきが悪くなった筈だが、鹿島は目を逸らさなかった。

「危なっかしくて、とても放っとけないな」
 それは、俺が負けを認めた証だった。しかし鹿島は、それだけじゃお気に召さなかったらしい。

 ていうかそれはどういう待ちだ。おい。こ、ころの準備というものが。
 と、とりあえず、立ち上がって、歩いて、肩に手を置いて。だめだうわちょっと待て。なんだこの展開。すごく照れるんだが、どうすりゃいいんだ。とりあえず顔が近い。て当たり前か俺が寄ってるんだから。


 頭の中は大混乱だったが、どうにか『儀式』をすませることが出来た。……のだが。
 その後がいけない。

 なんで平手打ちなんだ。


「……なんで、若松くんがこんなところにいるのよ」
 彼女の糾弾を訳も分からず聞いていたが、唐突に思い至った。
 ああそうか。君は『日曜日』から来たんだな。
 で、この後『火曜日』に跳んで、『水曜日』俺に図書館で、あの質問をするのか。
『一昨日、私、あなたの家に行かなかった?』

 これで、全部繋がった。先ほどの鹿島の反応が曖昧だったのは、もう一幕あると知っていたからか。
 分かった瞬間、笑いがこみ上げてきた。すぐに笑い止もうとしたのだが。
 ……だめだ、ここ数年ないくらいおかしい。笑いが止まらない。鹿島、君は最高だよ。忘れてた脇腹の痛みが、笑いと共に襲って来てもう、痛いんだかおかしいんだかわからない。
 それに呆れたのか、彼女が出て行く。ああ、これから過酷な一週間を送る君に、せめて。

「頑張れよ」

 このひと言を贈るよ。



 すぐに、階段を落ちる音がした。これで本当にザッツオールフィニッシュだ。



 痛む脇腹を押さえながら、ゆっくり階段を降りる。帰って来た鹿島を迎えに行くために。
 階下には美幸が出てきており、驚いた顔をしている。だから言っただろう? それが鹿島の趣味なんだって。しかも、クッションで安全措置までしてあるとはな。ああもう。凄いな君は。
 そして、俺は左手を差し出した。

「お帰り、鹿島」
「……ただいま」

 鹿島は、俺の手を取って、微笑んだ。


 

 ちなみに。ファーストが平手打ちのおまけ付だったので、帰る前にしっかりセカンドを頂いた。照れる様が凄まじかったが、赤くなった頬を見せたらおとなしくなってくれた。


 鹿島が帰った後、学生服の内ポケットを探る。中田の奴は、ここに例の『動かぬ証拠』があると思っていたようだが、

 ……実際にそこにあったのは、鹿島から貰った『4通目』。まあ、お守り代わりというやつだ。




◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

 おまけ

 そして数年後。こぢんまりとした教会で。

「永遠に変わらぬ愛を誓いますか」
 ……永遠か。いや永遠の約束ってそもそもあり得るのか? 出来ない約束はしないのが俺の信条だ。ならばこの場合の、最上の答えは……。

「前向きに善処します」

 とたんに会場は爆笑に包まれた。まあ、我ながら少々おかしいことを言ったという自覚はあるが、嘘をつくよりはましだ。
 ふと、横から、剣呑な視線を感じた。見下ろすと、今、前向きに善処すると誓った対象の彼女が俺を見上げている。しかもこれは、相当怒ってるな。そう思った瞬間、脇腹に鋭い痛みが走った。

 おい、痛いな翔香。脇腹なんかつねるなよ。


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2011/11/09 脱稿
驚きの筆削無し一発勝負。

以下、あとがきです。


【More・・・】

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あとがき
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 ここまでお読み下さり、誠にありがとうございます!
 まさかの9000文字超えになってしまいました。自分が一番びっくりです。
 正直、どう頑張っても3000文字程度しか書けないと思っていましたから、まさか自分がここまで突き進んでしまうとは、本当に思っていませんでした。

 最初は3000文字程度で終わる筈でした。しかし、犯人に電話をするタイミングを間違えてしまい、それを直した結果、若松和彦の過ごした土曜日を忠実になぞりつつ、原作の若松の心情を

俺得補填する

という、ある意味私の私による私のための若本充をしたわけです。

 一番力がはいったのはやっぱり、クロスワードで肩と肩触れる! オルゴールあとで応募しとく! 4通目の内容丸暗記! 神社でのやりとり! 『馬鹿』って言われた! からの翔香大泣き! 家で包帯! そして関くんの電話! ファーストからの平 手 打 ち ! そして若松の大爆笑と「頑張れよ」! そして

セカンドねつ造!!!!
及び、おまけ
「おい、痛いな翔香。脇腹なんかつねるなよ」

 です! です! 特に最後は、ドラマCDの「金曜・自宅階段落ち」の台詞を一部引用させて頂きました。

 とりあえず、大いなる俺得のために突き進みました。

 ぶっちゃけ本日2011年11月9日、ほっとんど寝てませんが、後悔なんてあるわけないです。理系ツンデレインテリ眼鏡万歳! 愛してる!(大馬鹿野郎)

 では、ここまで、この駄目人間にお付き合い頂き、本当にありがとうございました! 


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テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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