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2008.12/29(Mon)

Paradise Lost -before-

これはARIAの二次創作小説です。ジャンルは暁灯里です。
ご勘弁な方はバックを推奨いたします。

それもまた良し!な御方。ありがとうございます!↓へどうぞ!


最後の空・旧自宅前


それはまだ彼が、彼女への想いを知る前の話。


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   Paradise Lost -before-



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ネオ・ヴェネツィアに本格的な冬将軍が到来した。
この時期は太陽から火星(アクア)が遠くなるため、6ヶ月もこの寒さが続く。
何度経験しても、この寒さには正直閉口する。
手を加えなければ、そのあまりの寒さに全てが凍り付くほどなのだが、
火炎之番人と、上空に浮かぶ気象制御ユニット・通称浮き島のお陰で、
かろうじて人が外で活動できる温度を保っていた。これでも浮き島の炉はフル稼働している。

本来なら半人前に休みなど望むべくも無かったが、
ただでさえ激務だというのに二週間休みなしという状態が続いていたため、
親方がむりやり彼の休みを組み込んだ。

いきなりのOFF。もちろん予定などあるわけもない。

理由もなく、約束もなく。それでも何故か地上行きの空中ロープウェイ駅に、自然と足が向いた。
頭の中で漠然と、下に行く理由を作りながら。

いつものように。火炎之番人の印半纏に身を包み、首元にぐるぐるマフラーを巻き。
長い黒髪を揺らしながら、寒そうに身を縮めて、彼…出雲暁は下に向かった。

◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

地上に着いてすぐ、何気なく覗いた駅の横。そこにはショップのウィンドウ。
こまごまとした物が所狭しと並べられている。
そこで彼は、先ほど考えついた(…そうは言いつつも、毎回必ずこれに行き着くのだが)
下に来た言い訳、否、理由を頭の中で反芻した。

(そうだ。オレ様はアリシアさんにお会いする為に、ここまで来たんだ。)

何故か心に引っかかるものを感じながらも、毎回そのように自分を納得させながら、
地上で通い詰める唯一の場所へ向かう、その前に。

ちらりと先ほどのショップを覗く。そこは観光客向けの土産物屋。
地上の、しかも小洒落た店の所在など、彼にわかる訳もない。

(んじゃ何かしらのプレゼントが必要だよな…。うん。)

そう思いながら、店内に入った。

◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

(………。なんだ。この混沌(カオス)な雰囲気は。)

よくある土産物屋なのだが、ありとあらゆるものが売っていた。
ヴェネツィアンガラスはもちろん、干物につまみ。ジュースに酒。キーホルダーに果物。
醤油や油や調味料など生活用品の数々。トイレットペーパーまで売っている。
さらには高級菓子やらお手軽値段の箱入り菓子やら。
あげくのはてには帽子にTシャツに木刀まで。誰が買うのだろう。

「商魂たくましいな、おい」

思った事がまっすぐ口から出てしまう。素直すぎるのか無遠慮なのか。

(いくら何でも、このような店に、あのアリシアさんに似合いの品なんて…無いな。
 うん。あるわきゃねえ。)

一応 一巡りして、特に買う物も見い出せなかった暁は、
レジの横に申し訳なさそうに積まれた赤い袋の山と、その煽り文を、しげしげと眺めた。
曰く “冬の寒さもこれで安心!冷え切った手・足・腰を暖めます!”

「……?カイ…ロ?」

勤務はいつも釜場の近くだから、寒いと感じるのも通退勤時のみ。
元来熱い男 暁にとって、買ったことも使ったこともないその商品に、何故かとても心惹かれた。
それに正直、財布の中身もそんなに入っていなかったため、
アリシアのために高い買い物も出来なくて。
憧れの君にプレゼントを買えない自分を不甲斐なく思いつつも、
脳裏には違う人物を想い浮かべていた。

寒そうに手を口元に持って行き、吐く息で一生懸命手を温める小柄な少女の姿。

(そういえばあいつ。寒いの苦手って言ってたな。いつも手を温めてるし)

気が付けば、二種類の携帯用カイロを手にレジに向かっていた。ほとんど無意識に。

◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

無事、あの場所に行く理由も出来たし、出費も安く済んだし。
意気揚々と歩き続ける暁。

アリシアに会いに行く、というのが理由だというのに、
何故かもう一人の水先案内人に土産を買っている。
そんな自分の不可解な行動。それに気づいていないあたり、鈍感なのか無頓着なのか。
それに、今まで幾度となく立ち寄ったが、アリシアが社屋に居ることが、まず無い。
あれほど忙しいアリシアだから、今行っても居るわけがない。でも。
頭の片隅で理解していながらも、残り1%の偶然を期待して。

…それすらも言い訳であることを、今の彼は 知るよしもない。

◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

「たのも~~~~~っ!」

いつものように開け放たれた受付から一声。すぐに桜色の髪の持ち主が、ひょこっと顔を出す。

「あ!暁さんじゃないですか!いらっしゃいませ~~!」

しかしすぐに残念そうな顔になる。その顔を見て暁は、憧れの君がそこに居ないことを知る。

「すみません。せっかく来て頂いたのに…」
「皆まで言うな!貴様の言いたいことは分かった!アリシアさんはいらっしゃらないのだろう?
 お忙しいのだから、仕方があるまい!もみ子が謝ることでもなかろう!」

(…だから何で、こいつ相手だとこんな偉そうにしゃべっちまうんだろ。オレ)

毎回毎回、彼女は謝りながら、すごくすまなそうな顔をする。正直その顔が苦手だった。
自分が彼女を苛めているような気がしてしまうから。…そんなつもりは毛頭ないのに。

「とりあえず、こんなところで立ち話も何ですし、上がってお茶でも飲みませんか?
 今日は玄米茶と漬け物ですけど。締めは苺大福でいかがですか?」
「ずいぶん渋いチョイスだな。おう!遠慮無く頂くぞ」

玄関先で、ブーツに付いた雪を素早く落としながら、言葉通り遠慮せずに中に入る。
少し寒そうにしている彼女を半ば無意識に気遣って。出来るだけ外気に彼女を晒さぬように。

◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

「ずず~~~~~っ」
「ずず~~~~~っ」
「ずず~~~~~っ」

きれいにハモる、お茶をすする音三つ。発しているのは黒髪ポニーテールの火炎之番人と、
彼曰く“立派なもみあげ”の持ち主である水先案内人、そしてARIAカンパニーの会社社長。
三人して、ぱりぽりと漬け物を食べながら、お茶を美味しそうにすする。
あまりにもまったりとしていて、思わずうたた寝してしまいそうなほど。
冬の低い日差しがARIAカンパニーのオフィスを柔らかく照らし、室温と心を温める。

「あ、そーだ」

暁は、自分がここに来た目的を危うく忘れそうになりながらも、途中で買った袋を持ち上げて
もみ子こと灯里に押しつけた。

「やるわ。これ」
「?ありがとうございます。なんでしょうか…コレ…」

がさがさと袋の中から、もらった物を取り出す。

「あああ!ちょうど切れかかってたんです!ありがとうございます!」

その手にはカイロが二種。寒さに弱い灯里には願ってもない贈り物。
いつもの満面の笑みとともにお礼を言われた暁は、一瞬彼女の笑顔に目を奪われながら、
少し慌てて言葉を繋ぐ。

「おう!そっ…その、安かったからな!それにおまえ、寒さが苦手と言ってたろ?」
「はい。最近は特に寒くって、右手用に左手用、それから腰と足に入れてるので
 すぐ無くなっちゃうんですよぅ」

すこし困ったように笑いながら言う。

「おい…。そんなに入れてたら低温やけどするんじゃねえか?
 そんなことよりな、これ!これすげえんだそ!なんとだな、貼れるんだ!」

そんな彼女にいらぬ心配をしつつ、自分が見つけ、購入したカイロを誇らしげに自慢する暁。

「おお~~~っ!それが噂の!貼れるのがあるってアリシアさんに教えてもらってたんですけど、
 なかなか買えなかったんですよ。私、貼るタイプって使うの初めてです!
 明日から早速使わせて頂きますね!」
「おう!そうしてくれ!てかもっと厚着すりゃいいんじゃね?
 だるまさんみたくなって転がりながら移動すりゃウケも狙えていいじゃねえか」
「何言ってるんですか!人ごとだと思って!そんなことしたら運河に落ちて凍えちゃいますよぅ!」

なさけない顔をしながら反論する灯里に、愉快そうに笑う暁。

◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

会話が途切れる。気が付けば波の音だけ。
元来騒々しい彼なのに、なぜかその静穏が心地よく思われた。

彼は、ぼんやりと

(ここは、楽園みたいだな…)

そう 考えていた。

 いつ来ても、こいつがいて。たまに憧れのアリシアさんもいて。社長も自分の背中とか頭で遊んでて。
 それがとても居心地いい。自分の仕事に誇りを持っているし、火炎之番人として勤務する浮き島での
 生活も充実している。でも、ここは“心から休まることのできる場所”なんだよなぁ。
 いや、自分の家だって休むことはできるけども、ここにくると心底安らげるっていうか。

 …こんなこと、こいつの前じゃ、絶対に言えないけども。

 ここが無くなるなんてことは絶対に無い。
 でも、ここからこいつやアリシアさんが居なくなるってことは充分あり得る話なんだ。

 水先案内人の引退が普通の職より早かったりするのが、その労働条件の過酷さにあるって、
 前に何かの記事で読んだっけ。
 冬は極寒の中、底冷えする水の上。夏は灼熱の太陽の下、無風なら熱射病にもなりかねない。
 そんな厳しい中、こんなに小さいのに、やっぱりすげえなこいつ。

彼の中では、同志、もしくは妹のような感情しかない(と少なくとも本人はそう思っている)灯里。
そんな彼女に、正直感嘆している自分。


今は大丈夫。でも、遠い未来に必ず起こるだろう、楽園の喪失。
そんな悪い予感を振り払うように、彼は彼女に所望する。

「もみ子よ!茶のおかわり頼まぁ!」
「はい。ちょっと待ってて下さいね~」

いつものように。すぐに暁の依頼に応える灯里。ぱたぱたと台所に消える彼女を見送りながら。

今はまだ。この綿のようなやわらかい時間に 微睡んでいたい。





 でも、いつか“その時”が来たら、オレは どうするんだろう。





End.
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2008.12.29.脱稿
2009.01.05.筆削

以下、あとがきです。


【More・・・】

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セルフライナーノーツ  (Paradise Lost -before-)
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いつぞやの日記で妄想していた「暁、灯里にホッカイロプレゼント。きりばいはるもあるよ!」
何故こんな真面目になってしまったのか。もっとギャグな感じにするはずだったのに。
久しぶりに書いたらこんなことになってしまって、書いた自分が一番驚愕。
すみません。なんか暗い終わり方になってしまいました。-after-では明るく終わる予定です。
年の瀬になに書いてんでしょうねぇ。
本日朝8時頃から打ち始めて、出来上がりは19時。てか仕事の休憩中ってところがまた笑えます。
一日で書き上げるなんて、久しぶりにしてはなかなかな速さ。その分ぺらいっていうか短いのが申し訳ないのですが。そんなこんなで本日もあまり寝ていません(爆

題名はまんま茅原実里さんの「Paradise Lost」から。
-before-としたのは、-after-も考えているからでございます。
beforeは暁が灯里への想いを自覚する前、afterは自覚した後。

文中に登場の混沌な土産物屋は、北海道の片田舎にある土産物屋をイメージしました。本当に混沌だったな、あの店。BOXティッシュは百歩譲って需要あるとしても、トイレットペーパーは無いだろう。だというのに12ロールシングルが陳列してありました。そこへ行ったのは、もう5年も昔のこと。いまも無事営業しているでしょうか。心配。(てかネオ・ヴェネツィアにそんな店あんのか?って話もあったりなかったり

今回、暁にとっての楽園はARIAカンパニーと、そこに居るアリシア・灯里・アリア社長の三人。
だから、彼にとって楽園が無くなるということは、常にいる三人のうち誰かが欠けるという事。
実際、アリシアさんは“結婚”によって、早すぎる引退を決意してしまう訳ですが。
…でも何度考えてもここ納得いかないんだよな…。原作終了のための“大人の事情”にしか思えませぬ。すみませんすみません。でも思わず書いてしまいました。一応字色を薄い色にして、無駄な配慮をしてみたり。
別に無理して連載終了しなくても良かったのにぃ!(結局それ言いたいのか

BGMは茅原実里さんの「Paradise Lost」
どちらかというとスレイヤーズのSSにぴたりな歌詞なんですが。(て書く気なのかい!

久しぶりの投下。お気に召しましたら幸いです。

追記:読み返して、おかしい部分をちょっと直しました。一気に書くとどうしても粗くなってしまうのですね。

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テーマ : 二次創作小説 - ジャンル : アニメ・コミック

18:54  |  ARIA小説  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

●Re: モバゲーで

> 0510様

 お教え頂きありがとうございます。
 実は私、モバゲーってやったことも見たことも入ったこともないのです。ですので、ご覧になった方の小説は、恐らく私の書いたものではないと思います。シチュエーションが同じとかなら、「シンクロだ!」と当方喜ぶくらいの勢いですが、どの程度似ているのか知りたいと思います。しかし同居人に「モバゲーはダメ!」と言われてしまいましたので、入会することは出来ません。同僚の子もモバゲーで知り合った、会ったこともない男性から何度もメールが来るとこぼしていたので、余計恐くて入れません。ヘタレです。

 もしお手数で無ければ、コメントでもメールでも構いませんので、その方の小説更新日などをお教え頂ければ幸いです。ここに載せている小説は、私が一から考えた話なのですが、曲にインスパイアされまくりでありますけれど。てか自分の方が後だったら今後書くの非常に恐いです。世の中にはSS作家さんがたくさんいらっしゃいますから、多少のシチュエーション重複は覚悟しております。当方「シンクロだ!」と喜びたいのですが……。
 厚かましくてすみません。スルーして頂いてもよろしいです。

 ちなみに該当記事に間違いを発見してしまいました。
2009.12.29.脱稿 (←まだ来てない。未来の日付書いてどうするオレ)
2009.01.05.筆削
 ……てのが。これから2008.12.29に直して来ます。随所に駄目っぷりを発揮しております。コメントなければこのままずーっと気付かないままでした。ありがとうございます。

相模水門 | 2009.09.11(金) 19:04 | URL | コメント編集

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